生命の手記
大阪府大阪市 父
平成8年12月9日、長男「泰彦」はミニバイクで通学途中、三叉路を青信号にて右折後、信号無視で交差点に進入し、そのまま加速直進してきた大型鋼材運搬用トラックに追突され転倒、後輪でひかれ死亡しました。
彼の最後の言葉は「ぼくの方が青やったのに」でした。
この言葉を私は刑事裁判の法廷で、加害者証言で始めて知り、彼の最後の苦しみ、痛みを思うと息苦しいほどの悔しさと無念、悲しみに陥りました。
加害者は、業務上過失致死で禁固1年2ヶ月という、
「信じられないほどの軽い刑」でした。
息子を認めながらブレーキを踏まず、警笛を鳴らすのみでアクセルを踏んで追突するという悪質な行為が過失(ミス)として裁かれたことに疑問と怒りを覚え、神奈川県の鈴木共子氏が始めた「交通事故悪質事犯の量刑見直しを求める」署名活動に参加。
そのことが縁で、「生命のメッセージ展」に誘われ、「法律が変わっても、人の心が変わらなければ、悪質な事故や事件はなくならない」、「理不尽に命を亡くした者たちの無言のメッセージが世の中の人たちに命の尊さを訴える」、その考え方に共感して参加を決めたのです。
また、会場が浜松であったことも大きな理由でした。
当時息子が付き合っていた彼女が浜松出身、生前に「いつか一緒に浜松駅前で路上ライブをしよう」と約束していたことを知り、息子の作った曲をぜひ浜松の町で流してやりたい、と思いました。
そのことを知り、鈴木氏は会場でBGMとして息子のCDをかけて下さり、その後の会場でもBGMとして流してもらっています。
CDは、彼の生きた証を残したいとの私たちの思いに、たくさんの友人・音楽仲間たちが共感して、制作に協力してくれました。
大勢の人に聴いてもらいたいという彼の夢をのせて「生命のメッセージ展」とともに全国ツアーをしているつもりです。
浜松会場で偶然に息子のオブジェと隣り合わせになった少女が残した「優しい心が一番大切だよ」という言葉に感動したことも、この活動を今も続けている理由であるかもしれません。
優しい心でハンドルを握れば、事故なんておきない、やさしい心で思いやりを持って人に接していれば、いじめや、犯罪もおきることがない、そう信じることにしたのです。
会場に集まる遺族の共通した思いは、亡くなった家族の思い出を記憶しつづけ、確かに生きていたこと、その存在を忘れて欲しくない、ということです。
亡くなった原因を風化させず、その死を教訓として無駄にして欲しくない。
亡くなった生命は二度と戻らない、全ての命は地球より重くかけがえのないもの、
だから自分の命も他人の命も大切にしてほしいと訴えていきたいと思っています。