生命の手記


     三重県四日市市 母

わが子が自分より先に死ぬなんて夢にも思っていませんでした。
病気でもなく人生を全うしたわけでもなく、わずか6歳の命が人の手によって暴力的に奪われました。

平成12年8月26日、我が家のわんぱく次男、悠佑は、突然この世からいなくなりました。
小学校に入学し、初めての夏休みを満喫し、2学期が始まる直前でした。
安全確認を怠った10トントラックの運転手は発進する際、周りの車が警笛を鳴らし、自分自身も何か当たった感触を覚えながらも止まることなく悠佑を自転車ごと巻き込み、死亡させました。

いつもバカ笑いしてる、騒がしいほどに元気いっぱいだった悠佑。
そんな我が家の明るい光は一瞬にして消えました。
この世の中のどこを探しても私が生んだはずの小さな命は消えてなくなりました。
「ただいま」の言葉もなく、「おかあさん」と呼ぶ声も聞けず、あれから3年、醒めぬ夢を見続けています。
ランドセルも学習机もピカピカのまま。それが売り出される季節はどうしようもなく苦しいです。

会いたい、会いたい、会いたい・・・。もう一度会いたい、抱きしめたい。
それまで、生きていることが当たり前で、笑顔でいることが当たり前で、小さな子供達の喧騒にイライラして口やかましく叱ってた日々。
あの毎日がどれほど幸せだったか気付きました。幸せとは何か・・・なくして初めて気が付きました。

交通事故のニュースは連日のように流れているのに、それは他人事であり、自分の身に降りかかるわけはないと疑いもせずいました。
きっとそれは誰もが思っていることかもしれません。
でも現実は毎日どこかで交通事故は起き、そして大切な命を消されているのです。
ほんの一瞬の気の緩みだけでも、事故は起きるのです。

私達『命のメッセージ展』に参加してる遺族は、亡き家族のオブジェを通して 2度と悲劇を繰り返さぬよう、この苦しみを誰にも味あわせぬよう全国を旅し、訴え続けたいと思っています。

息子のオブジェは笑っています。
今、生きている命の笑顔を決して消さぬよう、命の尊さを知ってもらいたいと思っています。




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