生命の手記

     埼玉県 母


 私の長男・翼は、あと10日で18歳の誕生日を迎えるはずでした。警察官に命を奪われたのです。友人のバイクの後ろに乗っていた翼は、パトカーにはねられ人生を奪われたのです。警察の説明は、翼の友人T君の運転するバイクとパトカーによる接触事故です。「こちらにも過失がありました」というものでした。警察署でT君の父親は「県会議員の親戚がいる」と何度も言っていたのを覚えています。
 ニュースを見た目撃者が、事実と違うと警察署に来てくださいました。「調書を作る」と言って話を聞いていた警察は実際には調書も作っておらず目撃者なしとさえいい出したのです。私は告訴しました。T君の家族は度々警察を訪れていました。時には県会議員を伴って・・・。
 半年経って警察から連絡が入ったのです。「有賀翼君が運転していたという事で捜査は終了しました」(後日、T君の家族も警察を告訴しました)翼は友人への加害者として書類送検されてしまいました。私は目撃者を探し、陳述書を提出しようと思い、処分を待っていただけるよう検察への連絡を当時の弁護士に依頼しました。後日、陳述書を提出しようとしたとき、既に被疑者死亡のため不起訴と処分は決定していたことを知りました。弁護士は何もしてくれていなかったのです。嫌疑不十分の為、不起訴でなくては納得出来ません。しかし、日本の法律では、もう私にはどうすることも出来ないのだそうです。勿論、当時の弁護士は解任しました。
 私が告訴した警察官は不起訴となり、何も変わらぬ生活をしているのです。せめて反省の場を与えたかった。そんな願いも虚しく裁判さえ行ってもらえなかったのです。
 現在、民事裁判を行っています。真実を明らかにするために、私は裁判が平等に、澄んだ心と目、清い耳を持って行われることを祈ります。
 これからは自分の人生を自らの足で歩いていく。そんな翼の人生を奪い、家族や友人、多くの人の人生を変えてしまった警察官は、何の罪にもならず平然と家族との生活を楽しんでいるのです。許せません。翼が可哀想で仕方ありません。
 「ただいま」と帰って来てはくれないと頭では分っていても心が理解できず、毎日毎日苦しくて悲しくて淋しくて仕方ありません。何を目にしても何を耳にしても辛いのです。私の意識が無くなるまで、この痛みは消えないのです。でもそれは、我が子の命を、人生を守ってあげることができなかった愚かな親である私が悪いのです。「ごめんね、翼」。いつもいつもこの言葉しかありません。何のために生まれて来たのでしょう。まるで家族や友達、知人に温かな思い、優しい心、気持ちの良い笑顔を与える為に舞い降りた天使・・・。私は翼と妹の愛が二人で同じ時間を過ごしているのを見ていることが幸せでした。それなのに・・・。
 私が叶えて欲しいこと。それはただ1つ、時間を戻してほしい・・・。だた、それだけです。





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