生命の手記
千葉県柏市 母
「今から、帰るね!」の息子の最後の電話から10年半がたった。
かけがえのない私たちの長男は、高校2年生の17才で、この世から旅立った。
先日、交通事故遺族の調査が、武蔵野大学の心理臨床センターにより行われた。
アメリカでは、このような調査は、すでに行われ、突然の死、そして暴力的な死によるPTSDが遺族を苦しめている状態が明らかになっているとのこと。
日本でも、犯罪被害者の90パーセントが交通事故遺族なので、早急に専門家の育成等、救いの手をさしのべてほしい。
息子は、横断歩道を自転車で横断中で、あと一歩で渡りきる所を加害者はブレーキもかけず走りぬけた。
民事裁判の中で江守一郎先生の鑑定により、加害者のスピードがわかり、加害者の居眠り運転による事故であることがわかった。
又、衝突地点が調書と10数メートル違っていることや、加害車両は2台ということもわかった。
かけがえのない生命を扱う警察に誤りがあってはいけない。
今の加害者の言いなりの実況見分調書では、真実を明らかにはできない。
刑事裁判で加害者は、息子が飛び出したなど、加害者は虚偽の証言をしたが、それを傍聴席で黙って聞いていなければならなかった。
自転車は後輪だけが壊れていたのに・・・。
その時感じた無念さは今も胸の痛みとなって私たちに残る。
これを二次被害というのだろう。
先日、芸能人が死亡事故を起こし、芸能人だから逮捕されないと女性誌に書かれていたが、加害者はだいたいが逮捕されないだろう。
加害者は告別式に参列したり、動けば動くほど有利になっていくシステムはどうしても納得ができない。
また、交通事故の場合、初犯では執行猶予がつき刑務所に入らないケースは多い。
それが遺族を悲しませている。
加害者が心臓マッサージをしたり、加害者の誠意が遺族にも伝わったという記事に至っては何を考え違いをしているのだろうと とても腹が立った。
遺族は突然のことで、頭の中は真っ白で、感覚は麻痺しているだろうことは少し考えてもらいたい。
遺族の感情を逆なでするような記事は書かないでほしい。
私は4週間に1回、カウンセリングを受けているが、その部屋の窓から大きな欅(けやき)や、桜の木が見える。
春夏秋冬、景色は変わるが、木々は少しずつ成長している。
春の新緑の木々、薄紅色の桜の花、冬の葉を落とした欅の姿に私は救われている。
自然には規則性がある。生命の営みに終わりはない。
なのに、人間の世界では、若木の私の息子が、なぜ断ち切られたのか!
今だに私には合点がいかない。
生きている限り、その答えは見つからないだろう。
「生命のメッセージ展」に ぜひ、足を運んでください。
そして息子たちの声にどうぞ耳を傾けてください。
いつ、被害者になるかもしれない今だからこそ、私たちの想いを分かちあって下さい。