大事な人が亡くなるのはとてもつらいことですが、しっかりと事前に情報を集め、
 心の準備をしておかないと、いたずらに死にゆく人を苦しめ、あとで己の行為を悔やむことになります。
  特にがんの患者さんが亡くなるときは、たいてい悪液質になっていますから、状況を理解しない家族は、
 無理に食事を摂らせようとしたり、点滴や注射や酸素マスクを求めたりして、患者さんを苦しめます。
 何かせずにはいられない気持ちはわかりますが、悪液質になった患者さんには、静かに見守ることがもっとも楽な方法です。
 しかし、前もってしっかりと心の準備をしておかないと、なかなかむずかしいでしょう。
  医療は死に対しては無力です。それどころか、よけいな医療は死にゆく患者さんを苦しめるばかりです。
 よけいな医療というのは、死を遠ざけようとする処置です。
  「まだ治療の余地があります」とか、「なんとか別の方法を試してみましょう」などと言う医者も、内心では
 何もしないほうがいいんだけれどと思っているというのが、ほんとうのところです。
  一方、死にゆくがん患者さんに必要な医療もあります。それは痛みをコントロールするために医療用麻薬の使用です。
 モルヒネが主ですが、ほかにも人工麻薬のフェンタニルやオキシコドンなどもあります。
 飲み薬や持続注射、座薬や貼り薬もありますから、患者さんの状態に応じて使用できます。
  麻薬というと、中毒や副作用を恐れる人もいますが、死にゆく人に中毒の心配をするのはナンセンスですし、
 使用量をまちがわなければ副作用で命を縮めることはありません。
  麻薬は怖いなどという思い込みで、がんの末期で痛みに苦しんでいる患者さんを我慢させるほど、
 愚かで残酷なことはありません。
  私ががんになって最期を迎えることになれば、早々に医療用麻薬を開始してもらって、麻薬の安楽なもうろう状態で、
 この世とお別れしたいと思います。
 
 
視床下部がやられる